2022年3月号のメニュー

1 『CICOUTEのA to Z』第16回 P   北村千里(CICOUTE BAKERY・チクテベーカリー)
2 『有機ダイアリー』最終回「小麦畑だより」東博己(ろのわ)
3 『大将の気づき』最終回  黒木直人(饗 くろ喜)
4 『武蔵野スローフード宣言!』最終回 岩澤正和(ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ オーナー)
5 『nichinichi川島の上手いこと言っちゃって♡』最終回  川島善行
6 『新麦ニュース』 「小麦の教室」開校いよいよ迫る!  池田浩明(パンラボ)
7 『表紙の話』最終回 「群馬県藤岡市・福田農園」池田浩明

*記事内容は2022年3月時点のものです。

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AからZまで愛おしいパンたちを語る連載
CICOUTE BAKERY 北村千里
『CICOUTEのA to Z』

第16回 P
「Petit pruneaux プチプリュノー
パリのみきちゃんのチーズケーキ」
・はじめての工房は何もない町に

修行先の鎌倉を後にして、チクテの工房を立ち上げるべく両親の終の住処となる多摩境へ引っ越してきた時はだいぶたまげた。

多摩ニュータウンの最終開発地域。山を切り拓いてできた新しい町は、まだ町とは程遠いくらいの何も無いところでした。
駅から見える建物もほんの僅かで、「ここに小学校ができて、ここにマンション、ここのトンネルが開通したら真っ直ぐ橋本駅まで行けるようになる」などという父の説明も頭に入らないくらいに、どこを見ても何も無い、本当に寂しさばかりが募る風景でした。

もちろん「お店なんてやってもいったい誰が来るんだろう?」と。最初から店頭での販売など考えてはいなかったとはいえ、鎌倉の気持ち良い抜けた空や、自転車でぴゅーっと坂を下れば知った人たちがいる。楽しかった日々を毎日のように思い出しながら、半分泣きそうになりながら、パン作りをはじめました。

・食べられないから自分で作る

何も周りに無いから、あと情報も今みたいにググればなんでもなんてころではなかったので、
「あー、あれ食べたいな。」なんて思っても、ちょっとその辺では手に入らず、
「あー。みきちゃんのチーズケーキ食べたいなあ」なんて、鎌倉で出会ったパティシエの友人のケーキを思い出していました。

みきちゃんは鎌倉のカフェで働いていたときに店長に紹介されて、共通の知人もいたこともあって、じわじわと親しくなりました。
都心のカフェのパティシエさん。
みきちゃんから初めてもらったケーキは真っ白なチーズの生地の下にお酒のきいたプルーンのコンポートが忍ばせてあって底にはサクサクのタルト生地。濃厚なプルーンの味わいがチーズの生地と口の中で合わさると……
言葉を失う美味さ。
いつもみきちゃんに会うと、わたしもがんばろう!とそんな気持ちになる尊敬する友人。
ああ、みきちゃんに会いたいな。
あれ食べたいな…となったら、
「ならば自分で作るか」

・試作品がとりもったお客様との縁

プルーンはオーガニックのジューシーなドライプルーンを三等分くらいにカットして、そのままのクリームチーズと二層になるように包あんしてみる。
みきちゃんのはプルーンが下だったけど、クープを入れて、プルーンが見えたら美味しそうかな、と上にプルーンがくるようにしてみる。
発送と卸のパンを焼く合間に試作をしていたところ、工房の前に車が停まって
「分けてもらえるパンって、ありますか?」
若いご夫婦で可愛らしい奥さまでした。

当時は店頭販売はしていなかったけど、大橋歩さんというイラストレーターでエッセイも書かれる方がチクテのことをご紹介くださったこともあって、たまにそんな方が来られることもありました。
パン、ないんです。ごめんなさい。と言ってから「あっ!」と思い出して、
「試作のパンですが、これよかったら」とその時のプチプリュノーを手渡しました。
すごく喜んでくださって、それからも遠くからわざわざ来てくださって、店頭販売を始める頃にはお子さんが産まれて、
ご来店されるといつもあの時のことを思い出して、「あの時すごく嬉しかったんです」と言ってくださいました。

・どのパンにも物語がある

みきちゃんはその後はパリへ渡って、もう18年近くになるのかな。今もパリでパティシエとして頑張っています。
日本を離れる前に工房に来てくれた時も
「このパン美味しい。すごく好き!」と言ってくれて、ある年日本に一時帰国していたときにも「懐かしい。美味しい。」としみじみと言ってくれた。
遠く及ばないけどみきちゃんのケーキを思い出して作ったパンなんだよ。

半分にカットしてちょっとだけリベイクすると、ジューシーなプルーンがとろりとして、クリームチーズがほかほか温かいところを食べるのが好きです。
どのパンにも小さな物語があるから、種類が増えてもどれもなかなかやめられないのです。
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ろのわ・東博己『有機ダイアリー』最終回

 「小麦畑だより」
・小麦の成長が見える時期

小麦畑は、春分の日が過ぎるとその成長は日ごとに目に見えるようになってくる。
秋が深まった頃に播種された種がじっくりと発芽して、時には雪をかぶり、時には地表が凍り、そんな厳しい冬を乗り越え、更に踏みつけられ(麦踏み)自然と人為的の両方の試練を耐え忍び春を迎えることになる。

春分の日は太陽が真東から上り、真西に沈む、つまり昼と夜の長さが同じということである。
我々人間もこの日を春彼岸として先祖供養をする習わしがある。
仏教では西をおさまるところ、つまり極楽浄土と考え真西に太陽がおさまる春分の日を春彼岸、秋分の日を春彼岸として亡き霊を供養するのである。
Lonowaの畑ではこういった移り行く自然を全身で受け止めて成長して行く小麦を観察することが出来る。

 ・小麦とは人生である

この小麦をよく見ていると本当に学ぶことが多く人生と重なる所も多い。
厳しい環境を乗り越えて逞しくて立派になる所、踏まれた麦が強いのも事実として見せてくれるし、収穫が近づくにつれその姿もきれいになり、語りかけてもくれる。人の親となり子育てを経験する中で小麦から教わったことは大きかった。余談だが3歳になる孫の名前は「こむぎ」。娘が麦のように育てたいと言う願いをこめてつけたのだ。
そんな小麦と「こむぎ」との触れ合いを楽しむのが私にとって幸せを感じる時間である。

 ・小麦畑に争いはない

そんななか先月、心配な出来事が勃発した。 ロシアとウクライナの戦争だ。
ロシアとウクライナは、広大な農地のおかげで穀物生産量が多く両国合わせると小麦の輸出量も世界一の実績となる。
それは既に多方面に影響を与えていて小麦価格の高騰に及んでいる。
小麦を主に使うパン屋さんはもちろんだが、パン屋さん以外にも小麦を原料とする食品は非常に多く、最終的には消費者の財布に負担が出てくることは避けられない。
戦争は失うものが多く得るものは悲しみだ。なぜ殺し合わなければならないのか理解できない。話し合いで解決できるはず。
そんな願いを心に、遠いロシア・ウクライナで育っている小麦がかわいそうに感じて仕方がない。小麦畑に争いなんてどこを探してもないことを知ってもらいたいものだ。

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饗くろ喜・黒木直人
「大将の気づき」最終回
「修業時代」

 ・長い棒を買っておけ

黒木は18歳の時、赤坂の料亭に入りました。
入った当時は料理の仕事はなく、調理場がない(女将さんと中居さんだけがいる)料亭へ仕出しの配達、料理を盛る食器を何千個の中から用意など、本当に雑用の毎日でした。
ある日、兄弟子から長い棒を買っておけ!と言われました。

最初何につかうのだろう?と思いましたが、煮方の人が煮物をしている時に水の量をその棒で目印をつけて覚えたり、醤油をどれくらい入れた、砂糖は、味醂は、酒はと、兄弟子の仕事を見ながら覚えて(盗んで)行きました。
見つからないようにやっていたつもりが、兄弟子は全て知っていたという…f^_^;
賄いの当番の時に煮物を作って凄い残されたりしたことも…

・蟹酢のトラウマ

黒木が味付けの仕事ととして初めてしたのが、蟹酢でした。
二番出汁に薄口醤油、味醂、酢、砂糖で味をつけるものです。
当然レシピはなく、1.5リットルくらい作ればいいものを、親方に味をみせに行くと、辛い…甘い…薄い…と…
最終的に良しとなった時には、蟹酢3リットルくらいあり、残ったものは目の前で捨てられました。
それ以来蟹を食べる時に、蟹酢を使うと、トラウマで中々美味しく食べる事が出来なくてf^_^;
食器を出す仕事をしている時に2回間違えて、朝から営業終了まで、1週間も厨房の片隅に立たされたこともあります…

・自分から仕事を取りにいく

2年目に築地に親方と一緒に2人で仕入れに行く仕事をいただけました。
毎日他の従業員よりも3時間早く仕事に行くので辛かったですが、毎日毎日変わる食材を見て、吟味して、本当に楽しかったです。
本当は1年でその築地に行く仕事は終わりなのですが、自分からもう1年やらせてください!と、2年間食材の目利きを鍛えました。
当時仕事は自分で取りに行かないとどんどんなくなっていき、一つ上の兄弟子や同期にも差をつけられてしまうので、本当に毎日仕事をとる事に必死でした。
大根や蕪などの皮むきや、ゴミ捨ても皿洗いも、掃除も、全て人より多くやればそれが身になる、成長できる!と…
その癖がもう身体に染み付いているのか、今でもコラボや他の業種の方々と仕事をする時でも、必死になって仕事を取りに行く自分がいます(笑)
この仕事をとりに行く姿勢、今の時代はあまり見なくなりましたが、自分から仕事をとりに行く!という姿勢をくろ喜では教えています。
料理人は一生修行だと思う黒木でした。

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岩澤正和(ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ オーナー)
『武蔵野スローフード宣言!』

最終回 「みんなの幸せのために」
48回分の感謝をこめて
皆さんこんにちは 
かれこれ40数回も僕の記事を読んでいただきありがとうございます 
毎回毎回自分の想いや感じていることをただ思うままに書いて 
いつも皆様のためになればいいなと想いながら今に至ります 

この新麦コレクションで小麦を通して繋がり何人の笑顔がうまれたかはかり知れません 
小麦に関しては追い風なのか向かい風なのかまだまだ予断は許さない時代 
ただ一つ言えることは自給自足 
これを読んでくださっている大多数が思う活動を急いで進めなければなりませんね 

 コラムを始めたころはまだまだ国産小麦に対してピッツァ業界は見向きもしていなかったのですが 
今は違います 
皆様の協力によりヨーロッパでも認められて世界に誇れる小麦を今自分は扱わせていただき 
パン業界の方々の長年の活動から発展させてもらい 
関係者のご協力には改めて感謝しております 

日本の農業問題はまだまだ解決されていませんが
小さくても成功例を積み上げ
これからもみんなの幸せのために取り組んでいきますので
引き続きよろしくお願いします 
小麦を通して全世界に平和が来ることを願っています

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「nichinichi川島の上手いこと言っちゃって♡」最終回
by 川島善行
 「最終回」

 桜の蕾も少しづつ開き始め、小鳥のさえずりが春を告げようとしているこの良き日。
新麦新聞は最終回を迎えます。
皆様のお陰でここまで、、、、

かたい!!かたい!!!
かたいよ!!!!!!

おい!川島よ!!最終回だからってカッコつけてんじゃねーよ!
挨拶が、かてーよ!!!

『雪がとけて川になって流れてゆきます♪
つくしの子が恥ずかしげに顔を出します?
もーすぐ春ですね~?
恋をしてみませんか??♪』

いやいやいや!!!
恋なんてしてる場合じゃない!!!

この世界一為になる、「うまいこといっちゃって?」が終わっちゃいますよ!!!
ヤベーでしょ!!
こりゃ、まじーでしょ!!
どーする???
アナタは何を楽しみに生きる???

でも、終わっちゃうんです。。。
そして、もう文字数的に終わりなんです!笑笑
ど頭でカッコつけて良い文章書こうとして、文字数結構使っちゃったんです。。。

どーしよ!?
最後、どんなうまいこと言おう?
そうだ!最後は読んでくださった皆様に感謝の言葉で終わろうじゃないか!!

それでは最後のあいうえお作文です!

(あ)あなたは
(り)理由もなく
(が)頑張って読んでくれた。
(と)とうとうお別れの時間です。
(う)うまいこと言っちゃって?

皆様、約3年間このバカバカしいコラムにお付き合いくださり、ありがとうございました!!!
また、どこかでお会いしましょう!!!

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新麦ニュース
2022年3月

■「小麦の教室」開校いよいよ迫る!
4月、オンラインで小麦の知識を学べる「小麦の教室」を開校します。
農業、歴史、製粉、育種…深堀りすれば、私たちの知らなかった役立つ情報、知的好奇心を刺激されるわくわく感を得ることができます。
講師は、その道の研究者、専門家。
有名シェフが学級委員となり、みなさんとの間をつなぎます。
2ヶ月に1度テーマが変わり、連載形式でお届けします。
写真や動画も豊富に使い、一見むずかしいテーマも、わかりやすく、おもしろくお伝えする予定です。

会員の方は無料でご覧になれます。
公開の準備が整い次第、一斉メールで、URLとパスワードをご送付いたします。
ひとつのテーマを約2ヶ月にわたって連載。
何回かにわたってご送付いたします。
新着記事も一斉メールにてご案内いたします。
どうぞお付き合いをよろしくお願いいたします。
 
■新麦新聞休刊(縮小)のお知らせ
「小麦の教室」開校にともなって、テーマと役割が重なる「新麦新聞」を休刊させていただくことになりました。
どうぞご理解・ご了承をお願いいたします。
2017年3月から5年にわたってつづけてまいりました新麦新聞。
ご愛読どうもありがとうございました

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表紙の話 最終回

群馬県藤岡市・福田農園
早春3月。
小麦・ライ麦がまだまばらな畑に案内し、
「今年は播くのが遅かったので」
と福田俊太郎さんは照れた。

小麦が生茂るような畑にしないのは、考えがあってのこと。
通常30センチ程度の畝の間隔を40センチに広げている。
理由は赤カビ毒(DON)への対策。
かけられる農薬が大きく制限される自然栽培であるため、カビが生えにくい環境を作っている。

畝の間隔を広げる選択をするのには他にも理由がある。
肥料を入れない栽培方法。
小麦の粒以外の、茎やふすまを土へと還し、最小限を畑から抜き取るにとどめる。
畑で1年間に微生物などによって自然に作られる養分と、収穫量をバランスしようとしているのだ。
それによって連作障害を防ぎ、作物のおいしさをも狙う。

東京出身東京育ち。
大手企業で会社員をしていたが、仕事に矛盾を感じ、農家に転じた。
だから、たくさん収穫量を取ることを至上の目的とする農業の常識に与しない。

「普通に農業で生活できる社会にしたい」
地元のパン屋など顔の見える人たちに畑の思いとともに小麦を届ける。
それが「普通」になる社会を目指したいという願いは私たちも同じだ。
W8号の小麦畑(2022年3月、群馬県藤岡市・福田農園)