2021年1月号のメニュー
1 『CICOUTEのA to Z』第3回 C  北村千里(CICOUTE BAKERY・チクテベーカリー)
2 『大将の気づき』第10回 黒木直人(饗くろ㐂)
3 『武蔵野スローフード宣言!』第35回 岩澤正和(ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ オーナー)
4 『nichinichi川島の上手いこと言っちゃって♡』第16回  川島善行
5 『表紙の話』第10回「原農場・原伸一さん」 池田浩明(パンラボ)

*『守ることと変えること』by 廣瀬敬一郎(大地堂)は連載を終了させていただきました。
*記事内容は、2021年1月時点のものです。

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CICOUTE BAKERY 北村千里
『CICOUTEのA to Z』

記憶の中のパンたちをABC順に語っていく連載
3回目は北村さんが大事にするこのパンです

第3回 C
「Campagne その1 自転車選手のカンパーニュ」
焼いてるところを見られたくない

鎌倉のアパートでパンを焼いていたころからずっと作り続けてるカンパーニュ。
当時は家庭用ガスコンベクションで1日に焼けるのはたったの一個。上火も下火も無いオーブンなので天板を熱してそこにささっと籠をひっくり返して生地を乗せて慌ててクープ。
オーブン庫内下にひいた石にえいやっとお湯をかけたら急いで天板を入れてしばし待ってからスイッチオン。誰にもアクロバティックなこの瞬間を見られたく無いようなそんな感じで焼いていました。

町田の実家に工房を作って小さいけど業務用のオーブンを入れると、一度に何個もカンパーニュが焼ける! スチームもボタンを押せば出る!!というだけで猛烈に感動していたのを覚えています。
とは言っても売れませんでしたね~
カンパーニュってなんですか? なんて当たり前のように何度も聞かれました。
食パンに慣れ親しんだ日本人。
大きくて丸いパン。丸だと真ん中と外側とで大きさも違うのでなんとなく平等を愛する日本のひとにはやっぱり馴染みにくいのかもしれません。形を変えることもできたけど、それでも平和的な丸の形を変えることなく今も焼いています。

いつもカンパを買ういかつい人

実家下の工房に1年ほどしてから小さいお店をくっつけました。誰もふらりと通るような所ではなく住宅街の奥の方。わざわざ来ないと気付いてもらえないような小さなお店でした。
夕方暗くなったころ、「にょ」という感じでいかつい大きいひとがやってきて「これください、そのまま丸のままで」とカンパーニュを指さしました。
暗かったのもあったのかものすごく大きく見えて、その人の風貌がまた肩もいかついし顔もいかつい。肌の色も黒くて暗いお店で目と歯の白さが余計に際立つ。作業着に何故か腕にはぐるぐると包帯。怖いけど、カンパーニュ! しかもホール! うれしい! …けど一瞬言葉が出ませんでした。
なんだろうあの人、と思っていたら次の日もやってきてまたカンパーニュのホールを購入されました。それからまたちょっと経つとやってきて、やっぱり腕には包帯、そしてカンパーニュ、いつも暗くなってから。
不思議に思っていつか聞いてみようと思い、あるとき思い切って声をかけてみたところ、
「一年前に測量の仕事で通ったら、奥で何か作ってるのが見えた。次に来たらパン屋だった。自分の好きなベルギーの自転車選手がカンパーニュを食べていて、それみたいなパンをずっと探していた」とのことでした。
よくよく聞くと年齢は同い年で近くに測量の仕事に来ていて仕事帰りに寄ってくれてたとのこと。なんとなく謎が解けてほっとしたような、話すと意外にもよく喋る。そして喋り出すとやたらと長い。
それから現場や仕事が変わってもちょくちょくパンを買いに来てくれました。
ツールドフランスとかで見るようなピチピチの自転車の服装で来た時も当時は見慣れなかったので後ずさりしてましたけど。
ベルギーに遠征に行くといつもお土産に甘ーい不思議な味のチョコを買ってきてくれました。
たまにお店のみんなでBBQなどやる時に声をかけると大量のビールとチーズを持ってきてくれました。

人生とはわからないもの

ここまででもうお分かりの方もいるかもです。
うちの現夫であります。
今思うとチクテのカンパーニュの最初のお客さんと言っていいのかもしれません。
今もたまにカンパーニュを持って帰ると驚くほどのジャムをぬりたくって食べたり(これもベルギー仕込みらしい)、木こり(今の仕事)の現場に持っていってはお昼に外でホットサンドを作って食べてたり(羨ましいお昼)。
人生ってわからないもんだなあ、とカンパーニュを見るとふと思い出したりするのです。

パンと言えば、の愛すべきカンパーニュ、いくらでも話が出てきそうです。
次回もカンパーニュのお題で。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。

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饗くろ㐂・黒木直人
「大将の気づき」

今回は、新麦の供給者でもある梅野製粉・梅野哲平さんのお話です

第10回「生産者様と食材」

生産者に会うと想いが変わる

くろ喜は全国の生産者様から色々な食材をいただいてこいます。
鶏は兵庫県丹羽、山梨県甲州、メンマは福岡県糸島、九条ねぎは京都府京都市、季節の食材、初春の生わかめは宮城県石巻市、初夏の銀鮭は宮城県南三陸とまだまだあります…

店で使う前に生産者様に会いに行き、生産者様の想いを汲みとって一杯のらーめんを作ります。
スタッフも一緒に会いに行きます。
やはり生産者様に会わせると、その食材が特別な物に感じて、調理する時に丁寧に扱ってくれます。

普段からそういう想いを持たなければいけないのですが、やはり人間はいい意味で単純なので、スーパーで並んでいる野菜と、実際作られている方にお会いして、お話しを聞いた野菜とでは、後者のほうを、目の前にある野菜をいかに美味しくしようか、無駄なく使おうかと思うものです…
2017-12-27 の大将のブログから
梅野哲平さん‼️32歳の若さで、お父さんは半分引退で
ほとんどこの男1人でやっているんです‼️
ミナミノカオリ
この石臼でミナミノカオリを挽いているんです」
梅野製粉のミナミノカオリはちょっと?
いや大分違うんです‼️香り、旨味が‼️
味見するたびに衝撃を受ける甘さ

そんな食材たちの中で、この新麦コレクションで知った、福岡県八女市の梅野製粉さんのミナミノカオリの全粒粉。
それまでも九州の小麦、その中でもミナミノカオリはよく使っていたのですが、初めて使わせてもらった時の衝撃は今でも忘れません!
毎回の作業なのですが、製麺する前の小麦粉の軽量の時に毎回、粉を味見するのですが、梅野製粉のミナミノカオリ全粒粉を味見した時の、小麦粉の甘さ!!
そして製麺した後の小麦の甘味、風味…
この小麦粉は凄いなーと…
実際梅野製粉の梅野哲平さんにお会いして、話を聞いて…
パンストックの平山さんに本当に感謝しているお話しなど…
謙虚な姿勢と、それとは逆に突っ込んだ製粉? な仕事に対する真面目さがまた好きになってしまい、梅野哲平が挽くミナミノカオリを使いたいという想いがより一層強くなり…
毎回毎回製麺前の味見で、本当に美味いなーと、しつこいようですが毎回毎回本当に思うのです…(笑)

美味しい食材を使いたいと思うのは、料理人なら誰でもある思いですが、この人が作った物を使いたい!と思うのはまた違った想いに繋がり、生産者様に感謝しながら、料理する有り難みを毎日感じ、それらの想いをしっかりお客様に伝わるように、楽しく毎日過ごしています。
これからも素敵な生産者様にお会いできることを楽しみに料理します!
2021-03-17 の大将のブログから。
梅野製粉のミナミノカオリの全粒粉たっぷりの小麦の甘味も感じる麺です」
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武蔵野スローフード宣言!
by 岩澤正和(ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ オーナー)

第35回 「今こそ小麦の可能性を広げよう」

みんな危機に立ち向かっている

皆さんあけましておめでとうございます
新年早々パンチありますねー
メディアはウイルスのことで世界自粛
まさに世界大恐慌
バランスの悪い政府支援
有難いと思っている人
雀の涙と思ってしまう人
いろいろ立ち向かっていると思います

経営前年をクリアしているような方々は一握りですね
その一握りの業界のエースたち
輝かしい未来も見えてきてますね
目の敵にされている飲食店全体でみても
小麦従事者が比率としては高い多い気がします

輝かしい未来もある

自分はまだまだ苦戦していますが
友人の店のコロナ前売り上げ月300万だったピッツェッリアがイートインから
デリバリーと物販強化への業態変更で1500万まで上げていました
いい話もあるものですね
自分も緊急事態宣言真っ最中で収支を整えてもし利益を作ることができたら
周りの仲間がこのあとどうなるかなと実はわくわくしていて
ただ変化に対応する能力が必要ですね

前回の緊急事態宣言の時とは違い
うちのお店に来ている方々の共通点は
精神安定
これが今自分たちが口にしている課題です
小麦だけじゃないのですが
精神安定に小麦が必要とされています
されるよう想像して乗り越えていきましょう

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「nichinichi川島の上手いこと言っちゃって♡」
by 川島善行 第17回

「ベーグル」
nichinichiのFacebookより。
さぁ! はじまりました!
毎度毎度、読み終えた後に何も残らないこの上手いこと言っちゃって!
今日も皆様、どうぞ流し読みしてください!笑笑

今回のテーマは『ベーグル』です。

ベーグルって他のパンとあきらかに違う工程があって、「ケトリング」と呼ばれる、「ゆでる」工程があるんですね。

え!??

いやいや、茹でる??
うどん!? ラーメン??

みたいに思っちゃいますよね!
そして、その後焼きます!!

茹でて焼くの?? ベーグル??

焼きうどん的な???
それが、ベーグル??

そうなんです。それがベーグルなんです。

ハイブリッドブレッドなんです! ベーグルって!!
そうなんです、あんなに可愛いフォルムなのに、カッケー事やってんスよ! ベーグルって!
見た目に左右されちゃいけません!!

アイツ、結構、あざといっす!!

そんなこんなで、今日は謎かけを

「ベーグル」とかけまして
「前厄」と解きます。

『焼く(厄)前も肝心。』です!

後厄も気をつけてくださいね!
お正月なので、厄祓いってことで!

うまいこと言っちゃって! 
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表紙の話
「待ってくれてる人がいるから踏みとどまれる」  原農場・原伸一さん

文=池田浩明
台風19号の襲来により越辺川が決壊、新麦ハナマンテンを作る原農場が浸水したのが2019年のこと。
農業倉庫・圃場の被害は数千万に及んだ。
後始末に追われて種まきが大幅に遅れたが、幸い天候に恵まれ、2020年は平年より少し多い収穫が得られた。

昨年、国土強靭化のため越辺川の治水工事が行われることになった。
その一環として、原農場の圃場も治水に活用され、農業の継続が危ぶまれる事態に。
原さんは当然よしとせず、国に意見書を提出。
これが認められ、治水事業は原農場に配慮、農業と共存する方向へシフトした。
「今までこつこつ農業に取り組んだことを評価していただきました」
原さんの育てたハナマンテンは、埼玉県産ハナマンテンの約6割を占める。
埼玉で貴重なパン用小麦として、地元・川越で地産地消されているのみならず、埼玉、首都圏、さらには、日本全国の新麦コレクション会員のベーカリーやラーメン屋さんによって使用される。
こうした取り組みがあったからこそ、原さんの圃場が水没することなく、残されたのだ。

ハナマンテンを通じてつながりあう絆。
それは見えているわけではないが、思いは原さんに届いている。
「水害のときボランティアできていただいた方々も、きっかけはハナマンテンで知り合えたこと。
前田食品のスタッフさんだったり、パン屋さん。
昨今は気象状況が劇的に変化しやすく、農作物を作るのがむずかしい。
人間だから弱い部分がある。
挫けそうになる。
でも、ハナマンテンを待ってくれてる人がいることを思い起こしたとき踏みとどまれる。
助けてくれたことを思い出すと奮起しますね。
思い起こしては奮起、思い起こしては奮起。
日々奮起の毎日です」

昨年は、農業設備の復興も成し遂げ、11月までに種まきも完了。
この冬は記録的な雨の少なさで、ごく一部発芽しないアクシデントがあったものの、全体としては順調だという。
一昨年の悲劇の穴を少しでも埋める収穫を期待したい。