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2026年3月号のメニュー
1 CICOUTEのA to Z 
第25回 X 「またまたXという難題から広げてみる。」
CICOUTE BAKERY 北村千里
2 3月の平山写真館   第4回「The Detour 」 
SHŌPAIN ARTISAN BAKEHOUSE  平山翔 
3 パンの交換日記
第4回 CAFE & BAKERY KERIKERI  福島県福島市
酒井 隆弘さんとの往復書簡
CROFT BAKERY 久保田英史
4 畑からはじまるパン作り
第4回 「島田製粉所~Urban Milling~」
C'EST UNE BONNE IDÉE!  有形泰輔
5 今月の新麦コレクション! 新麦コレクションの2026年度総会、無事に終了しました。

*記事内容は、2026年月時点のものです。

1 CICOUTEのA to Z AからZまで愛おしいパンたちを語る連載 

 CICOUTE BAKERY 北村千里

第25回 X またまたXという難題から広げてみる。

3月もあっという間に過ぎ去ります。
3月後半はチクテお決まりの春休み。
初の九州、学びと会いたい人へ会いに出掛けます。

「X」
またまた難題です。
pain aux noix(パン・オ・ノア)
cake aux fruits(ケイク・オ・フリュイ)
pruneaux(プリュノ)……
思い浮かぶのはフランス語ばかり。

2年前のフランス旅行の後から、ずっと思っていたフランス語の勉強を
こっそりはじめてみました。
今の自分でできそうなこととなると……、
「duolingo」のアプリを使用してのささやかな学びの時間です。

とにかく続けること。
寝落ちしてできない日はあっても、
パン以外でもちょっとずつでも何か前に進んでいけるよう、
日々ひっそりと続けていることでもあります。
昨年デンマークを訪れた際、
デンマーク語は難しすぎて学ぶにはハードルが高すぎる、
でも英語ができていたらもう少し会話することができたのかもしれません
(皆さん英語は話せるようでした)。
日本にいて日本語でも会話に戸惑ってしまうし、
言葉が出てくるまでも時間がかかるのに、英語。
もうすでに高い山を登るようです。

会話ができなくても最高に良い笑顔と気持ち高めなテンションと、
大きめなリアクションを持ち合わせていたら、
もう少し違っていたのかもしれません。

デンマークの旅は、カナダへ留学中の娘も同行してくれていたので、
旅の案内をしてくれた「くらもとさちこさん」と
途中度々仲介に入ってくれた娘の英語でその場をやり過ごすことができたけれど
伝えたいことを伝えられない歯痒さに
気持ちも心も小さくなってしまう場面は多々ありました。

日本語の「はい」は
デンマーク語では「こんにちは」です。
お話聞きながらいつものように「はい、はい」というたびに苦笑されていました。
そのことを後で知って、
せめて英語話せたらな……。
もしくは笑顔と大きめなリアクション。
リアクションは下手でもせめて笑顔をと
顔のマッサージをしてみたり笑顔の練習をしてみたり。

もちろん英語の勉強もはじめてみましたが、
フランス語の響きの美しさが好きなのと
フランスの大雑把さと
ふとした時の人のやさしさが好きで、
フランス語にばかり注力していて、気がつくと英語は置き去りに。

インバウンド効果もあり、
またチクテのある南大沢は近くに大学も多くあるので、都心ほどでは無いですが、
コロナ明けてからは留学生や大学の講師らしき海外からのお客さまも戻ってきていて、
そんな方の中には日本語も達者な方も多いですが、せめて僅かでも
こちらもコミュニケーションの手段を持っていられたら。

チクテには「ろう」の方もよくお店に訪れてくれています。
手話を学んでいるスタッフがいるので、
そのお客さまと楽しそうに手話で会話している姿を見ていると
言語を学ぶということは言葉や国籍以外でも、
何かにとらわれずにコミュニケーションを
取れるということなんだとあらためて思いました。
そして、本当の意味での「ウェルカム」とは、そういうものなのかなと。
英語でもフランス語でも、手話でもなんでも、
どんな方ともコミュニケーションが生まれて、お互いに気持ち良く、
心地よい場であること。
そんなお店であれたら、いいなと思います。
どんな方にもウェルカムであれるように、手話はスタッフにお任せして
せめて英語と好きなフランス語で片言でもコミュニケーションが取れて、
嬉しい気持ちで帰路についていただけるといいなと思います。

パンもですが、言語も日々の積み重ねです。
どちらもまだまだ遠く険しいかもしれない道ですが、
パンというツールから生まれるコミュニケーションに
いつか役立てられる日が来ることを願っています。

パン屋さんという開かれた場であるからこそ、
そういうこともとっても大切なことなのかもしれないですね。

それぞれの人の文化や背景へのリスペクトも忘れずに。
もしかしたら世界の平和へも繋がる、ひと匙なのかもしれないですね。

2 2月の平山写真館 

SHŌPAIN ARTISAN BAKEHOUSE  平山翔 

第4回「The Detour 」

ふと思い立って、遠回りをして路地を歩いてみたくなることがある。
大抵そこにはいつも、良い光が差し込んでいて、惹かれるように足を踏み入れてしまう。

少し進んだ突き当たりに、小さな広場があった。
バサバサという、たくさんの羽音。
ふと横を向いた瞬間、足が止まる。
えっ、と声が漏れそうになる光景だった。

女性に写真を撮ってもよいかと尋ね、カメラを構える。

あいにく、*ブレッソン的な決定的瞬間には不向きなカメラだ。

シャッタースピードも、フォーカスも、絞りも、すべてがマニュアル。
時間がかかるうえに、あいにくフィルムの残りは一枚。
一発勝負だ。

強い西陽。光も複雑で、これは難しい。
半ば感に身を委ねるようにして、シャッターを切った。

そのときの葛藤や焦りが、
わずかに甘いフォーカスとなって写真に写り込んでいる。

ーーそれでも、いや、だからこそ。
これだから写真は面白い。

着いて早々、
最高に美味しいファラフェルに出会ったかと思えば、
こんな出会いも用意されていた。

ここは、金色の光が強く記憶に残り、
ミューラルやストリートアートが
文化として自然に息づいている街。
メルボルン。

ふと思い立って余白を歩くことができるのは、
お腹いっぱい食べて、心も少し満たされているからかもしれない。

*アンリ・カルティエ=ブレッソン
「決定的瞬間」
意味と形が、同時に立ち上がる一瞬を撮ること。
世界は常に動いていて、
その流れが一瞬だけ美しく整う。
写真は、その瞬間を逃さず受け取る行為。

3 パンの交換日記 

CROFT BAKERY 久保田英史 

第4回 CAFE & BAKERY KERIKERI 

福島県福島市

酒井 隆弘さんとの往復書簡

CAFE & BAKERY KERIKERI の酒井さんから送られてきたアソート。

  CAFE & BAKERY KERIKERI の酒井さんから送られてきたアソート。

ある飲みの場の終わり際、酒井さんと話しが盛り上がって、パンの交換こをしましょう!と声をかけてもらったことから今回のやりとりが始まりました。

箱を開けると収まるパンは一つひとつが個性的。

カンパーニュはガシッと焼いたようで、口にするとシュルシュルとほどけるように溶けていく。かわいらしい全粒粉レーズン食パンは、クラムの気泡が顕微鏡でみた細胞組織のような気泡でついうっとりしてしまう。酸味を抑えたパンに、合わす素材の香りや味の効かせ方がくっきりしていて、そこに作り手の意識を感じる。

お店が浅煎りめのスペシャリティコーヒーを出すカフェでもあるからか、豆のフレーバーノートのように、意図して組んだのだろうそれぞれのパンや菓子から検出されるフレーバーがあって、それが単品で口にするだけでなく、個性の異なる飲み物と合わせることを誘導させる。

食事パンは、食べるひと目線で、いかに食べやすく、健康的であることから、日常に取り入れたくなるよう細かな技術を加えている。湯ゲルの一部の水を米麹から仕込んだ甘酒にしたり。不溶性食物繊維を多く含むフスマを湯種に加えたり。新麦コレクションの勉強会でも、いつも学ぶ姿勢をお見かけしていた、その眼差しが反映されているパンたちでした。

吟味された素材には、地元のものが目立ちます。
市内の中心にある信夫山の柚子や、福島県独自のりんごの品種“べにこはく“。
地元の製粉所、木羽屋製粉(二本松市)さんが挽くユキチカラ全粒粉や、郡山市の小麦生産者が農薬不使用で栽培する南部小麦など。

それもこれも、震災での原発事故による出荷停止を経て、地元素材をできるだけ取り入れたいと思うようになったんだと話してくれました。

ちょうど東日本大震災から15年の春。
人は時にネガティブと捉えられることからも立ち戻り、深みを得ることができることを酒井さんの取り組みから学ばせてもらいました。

酒井さん、ごちそうさまでした。

CAFE & BAKERY KERIKERI
福島県福島市曽根田町1-18
@bakery.kerikeri

僕からのアソート

この項ではパンの往復便をしてくださるお店さんを募集しております。

よかったらお気軽に僕のInstagramのページへDM、もしくはcroftbakery@gmail.comまでお声がけくださいね。お待ちしております^ ^

4 「畑からはじまるパン作り」

C'EST UNE BONNE IDÉE!  有形泰輔

第4回 「島田製粉所~Urban Milling~」

だんだんと暖かい日が増え、春が待ち遠しい3月。
麦踏みを終えた小麦はここから一気に大きくなっていきます。

今回は、麦の成長を待つ間、その小麦を挽いてもらっている島田製粉所さん(東京都千歳台)についてお話させて頂きます。
製粉・精米業を始めたのは大正十年、その頃千歳台は千歳村廻沢と呼ばれ、品川用水路を利用した、水田や小麦畑が広がる農作地帯だったそうです。

その土地で農家を営みながら、製粉・精米業を立ち上げたのが島田製粉所さんです。

時は流れ都市開発が進み、農地の減少と共に小さな製粉所は次々と廃業し、大規模な製粉所に集約されていきました。
そんな中、縮小したものの今でも変わらないやり方で丁寧に精米・製粉を行っています(工場の奥には今でも、昔使われた製粉機が何台も鎮座しています。もう動きませんが、当時の空気感が伝わり、なかなかロマンを感じます)。

一般的な大きな製粉所は、基本的に個人農家さんからの小ロットでの原麦(製粉前の麦)は受け入れてもらえません。

“作ったけど挽いてくれるところがない!”そんな行き場の失った小麦を挽いてくれるのが島田製粉所さんです。

私たちの使う藤田農園さんの「ユメシホウ」はもちろん、新麦コレクションで扱う「61 SIXTY-ONE」もこちらで製粉しています。
都市型製粉所(Urban Milling)。
都市部にある小規模な製粉所を指します。

まずその強みは、製粉所とパン屋さんとの距離にあります。
小麦は製粉されると、そこから酸化(ネガティブな香りが増えていきます)していきます。
生鮮食品と同じなのです。

ネガティブ(主にふすま臭)な香りがせず、クリアにその小麦の個性を感じることが出来ます。
挽きたての小麦を使いたい、でも自家製粉に踏み切るには金銭面・労務面共にコストがかかりすぎる……。
そんな都市部のパン屋さんの悩みを、近隣の小規模製粉所とのパートナー契約という試みで、解決できる可能性があるのです。

2つ目に、トレーサビリティが可能になることです。
その小麦粉は、どこで誰が生産し、誰の手でいつ製粉されたのか、そして私たちがいつパンにしたのか。
そのすべてが可視化されます。
事業者・消費者にとっても安心安全につながります。
また、小麦の多くを輸入に頼る日本において、フードマイレージを減らす事にもなります。

「その地域のパン屋さんが、小さな製粉所にそこにしかない自分のためにだけに挽かれた小麦粉を受け取りに来る。お土産にその小麦のパンをもって。」

なんだか素敵な絵だと思いませんか?

今後、私たちのように小規模な製粉所さんと連携して、様々なチャレンジをするパン屋さんがどんどん出てきてほしいなと思います。

そうすれば、もっとたくさんの個性的な小麦粉が出てきて、もっともっとパン屋さんが楽しくなると思うからです。
職人さん目線からでもパン作りをライフワークにするなら、そんな試みも面白いと思います。

今回は、少しマニアックなお話になりました。
また新しい価値をお客様に届けられるよう、頑張っていこうと思います。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。

今月の新麦コレクション!

新麦コレクションの2026年度総会、

無事に終了しました。

3月23日(月)にドーバー洋酒貿易にて、新麦コレクション2026年度総会が開催されました。
会場には30人を超える会員の方々が参加してくださいました。ありがとうございます。

2025年度の活動報告と会計報告の後、2026年度の事業計画について、新たな取り組みについて、提案がありました。

1)2026 年の運営スローガンについて 「こんな未来になったらいいな」を形にする。
  「もっと美味しくて安全な小麦があふれる日本」という原点回帰を目指す。

2)「美味しさ」の再定義と「小麦アワード」の創設。
  新麦コレクション創設からの10年間で気づいた
  挽きたての香りの良さを根拠とした品質向上、
  フィードバック機能の強化のための品評会「小麦アワード」の新設を提案。

 3) 会費制度の改定について
   特定の企業協賛に依存せず、会員の皆様の主体的な支えによって運営される
  「独立性の高い組織」へと移行する(2026 年 4 月 1 日より以下の通り会費制度を改定)。

  ・企業会員 1 口 50,000 円(旧 30,000 円)
  ・正会員 1 口 5,000 円(旧 1,000 円)
  ・賛助会員 2,500 円(据え置き)
  *会員区分の統合と拡大 スタッフ会員を廃止し、現スタッフ会員は正会員へ移行。

 4)企業会員の新制度:「共創パートナー」について
  2026 年からは、イベントごとの協賛ではなく、
  新麦コレクションの年間の活動に対してのプロジェクト型支援へと進化させる。

 5) 運営の民主化と次世代育成  
  理事による運営から、会員と共に歩む「自走型組織」へアップデート。
  ・運営サポートメンバー(ボランティア)を募集。事業ごとに「やりたい人」を募り、
      マネジメント経験の場として提供。
    ・新理事として北村千里シェフ(CICOUTE BAKERY)が就任。
    ・次世代リーダーの輩出するために、若い世代が運営の核心に触れる機会を増やし、
      会の未来を担う人材を育ていく。
    ・理事長は池田氏、副理事長は前田氏は継続。

*詳しい総会資料をご覧になりたい方は、こちらで読むことができます。
 https://drive.google.com/file/d/1t1fBjBNm3sEEHMC9BbmKLuNDGj7apV_-/view?usp=sharing

スタートして11年目になりました。NPO法人(特定非営利活動法人)として、
今後も真摯に取り組んでいきたいと思っています。
また、生産者、飲食店、製粉会社代表の方々から、以下のお言葉をいただきました。

副理事長・前田氏 
北海道での「小麦畑ミーティング」を通じ、生産者とパン職人の交流を深化できた。厳しい農業経営の中で、美味しい小麦の安定供給と自給率向上を目指す。この会には意義がある。一緒に食に貢献して、日本の小麦のシーンを熱くしていきましょう。

理事・杉窪氏
新麦コレクション設立の思いは「こんな未来になったらいいな」。 設立10年で国産小麦の使用は定着したが、「旬の新麦を味わう文化」で夏場の売り上げを増やす取り組みはまだ浸透していない。新麦をおいしくするため、「小麦アワード」を考えた。農家さん、流通の方々、製粉会社さん、消費者を巻き込んで、もっと美味しい小麦を作りたい。

江別製粉・徳梅氏
報告としては、ハルユタカを作っている江別市畑作生産部会が農林水産大臣賞受賞。2026年の弊社新麦売上が3トンから10トンへ回復。 実需で使っていただくパン屋さんの声を生産者に届けるのが私たちの仕事。小麦生産の次代を担う若手のモチベーション維持には、消費者の「美味しい」という声の還元が不可欠。希少な「ハルユタカ」等の銘柄を守るため、製粉会社として産地と実需者を繋いでいく。