講座4小麦の風味 ⑥キタノカオリはなぜおいしいのか?
今回は、糖分のデータを見ていきましょう。 というか、大部分が「キタノカオリはなぜおいしいのか?」を探求するお話になります。 分析結果からは、キタノカオリがいくつもの”甘くなる仕組み”を持っている 国宝級の品種だということが見えてきました。
6品種の香り分析のデータがそろったとき、香りの種類がもっとも少なかったのがキタノカオリでした。 僕はそれを見てかなり焦ってしまいました。 おいしい=いい香りがたくさんある だと思い込んでいたからです。 キタノカオリって、科学的に分析したら、実はおいしくないという結果になってしまうのではないか。 そんな心配さえしていたのですが、真実はまったく逆で、香りの種類が少なく、研ぎ澄まされてクリーンだからこそ、あのおいしさになるのです。 おいしさに関する僕の思い込みさえくつがえしてくれる。 キタノカオリは実に偉大な品種だと思います。 生産者さんにはご苦労をおかけしてしまうかもしれませんが、国産小麦の象徴として、末長く作り続けてほしいというのが、僕の願いです。
●次号に続きます。