講座1オーガニック ②
「オーガニック」と「有機」は違うの?
澤登先生に聞く
「オーガニック」や「有機」や「自然栽培」や「無農薬」。 いろんな言い方があり、混乱してしまいますよね。 今回は、まず「キホンのキ」から。 同じような意味を指すいろんな言葉の区別を、 恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科教授の澤登早苗先生に聞きました。
澤登早苗(さわのぼりさなえ)
恵泉女学園大学人間社会学部社会園芸学科教授 1959年、山梨県牧丘町の有機栽培に取り組む果樹栽培農家生れ。両親亡きあと、夫とともにブドウなどの有機果樹園を継承。東京農工大学大学院修士課程時に、ニュージーランド・マッセイ大学大学院へ留学。帰国後、東京農工大学連合農学研究科(博士過程)に進み、キウイフルーツに関する研究で、大学院修了(農学博士)。1993年に日本で初めて開催された有機農業の国際会議IFAOMアジア会議にボランティアとして出席し、みどりの革命(新品種の育成と化学肥料・農薬の多投による栽培方法)が、アジアの農村の環境を破壊し、疲弊させたという各国の報告を聞き、大きなショックを受ける。1994年から恵泉女学園大学へ。有機農業は、環境にやさしい農法であるだけでなく、人を育て、社会課題を解決する可能性があることを、実践を通じて訴え続けている。
「有機」や「オーガニック」の正しい使い方
「2001年に有機JAS法が施行され、化学肥料や農薬など禁止物質を使わないものを、『有機』や『オーガニック』と呼ぶんですよ、ということが定められました」と澤登先生。
それまでは、有機やオーガニックと名乗りながら素性のわからないものがあったので、法律によって名乗っていいものの基準が明確に定められました(それまでは法律ではなく、農水省によるガイドラインだけだった)。 その基準はこの3つです。
- 種まきや植え付けの前に2年以上、農薬や化学肥料を使用していない田畑で栽培すること
- 栽培期間中も禁止された農薬、化学肥料を使用しないこと
- 遺伝子組換え技術を使用しないこと
「この法律ができてからは、『オーガニック』っていうカタカナの言葉も、『有機』っていう日本語の言葉も、同じ意味で使われるようになっています。ただし『オーガニック』『有機』と名乗るときには、認証を受けないといけません」
- 有機=オーガニック。
ただし、商品に有機やオーガニックと表示して販売することができるのは、「有機JAS認証事業者」だけです。 これになるためには、「登録認証機関」から法律に適合していることを認証される必要があります。 認証を受けていない事業者が作ったものを有機やオーガニックとして表示して販売することはできないので、注意してください。
有機でも使っていい農薬がある
「ただ、どうしても、日本の場合は、夏に雨が多くて、作物の病気が多いので、どうしても防げない場合には、『使っていいですよ』という農薬が指定されています。オーガニックだから、有機だからって、一切農薬を使ってはいけないわけではないんです」
これは、誤解しやすいポイントではないでしょうか? 「有機農産物のJAS規格」によると、「化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避ける」ことが定められているだけで、使ってもいい天然由来の肥料や農薬が列挙されています。 たとえばお酢(食酢)も使用可能な農薬のひとつ。 一切使ってはいけないと考えるより、いざとなったら使えるものもあると考えると、有機をやってみようと思ったときのハードルも下がるのではないでしょうか。