講座1オーガニック
④ 続・オーガニックとは循環である。
澤登先生のお話の続き。
前回につづいて、「オーガニックって循環のことです!」とわかりやすく考えようというお話。
なぜオーガニックがいま求められているのか?
いま話題のSDGsの目標とも関連させながら、考えていきます。
お話していただくのは、もちろん澤登早苗先生(恵泉女学園大学)です。
前回は、有機農法を自然そのものが行っている循環の観点から見てきました。
一方、近代農法(化学肥料や農薬を使う農法)は、植物が必要としているものを化学的手段によって人間がぜんぶそろえてあげて行う農法といえるでしょう。
これを時間の流れという視点からもう少し見ていきましょう。
近代農法と有機農法の違い
「近代農法では、植物が必要としている分よりもちょっと多めの化学肥料を加えます。栽培が終わると、土をばーっと耕します。化学肥料は水に溶けやすいので作物が吸わなかった養分は下にぜんぶ流れてしまいますので、また必要な化学肥料を加えて作ると。だから1年に1回リセットをかけるという形になります」(*基本、有機農法も土を耕して行います。耕さないのは自然農法、自然農など一部の有機農法だけです)
「有機農法の場合には、毎年毎年、少しづつ蓄積していきます。自然の光合成を使って、草が生えました。それを土に戻します。そこにいろんな生き物が棲むことができ、その生き物は、植物が必要なものを供給するために働いてくれます…っていうような形で、そこには豊かな生態系がつくられ、その仕組みが生かされていきますので、だんだんよくなってきます。収量的には少し少なめの方が安定します」
有機農法は自然からすべてを奪い去らない。がゆえに、年単位の収量は少なくみえる。一方、近代農法はマックスまで収量を取り切ることができる。かつ、労働時間も少なくできる。短期間に限って、年単位の生産効率を考えると、近代農法が優位になります。
ところが、長年それをつづけてきたことで、見えてきた弊害もあります。
「近代農法の場合には1年に1回リセットするっていう、ある意味、工場でものを作るような考え方。でも、だんだん限界が見えてきた。化学の肥料の値段も上がってくる、水の値段も上がってくる」
最近の原油の高騰によって、化学肥料の値段が上がっています。生産現場をまわると、本当に近代農法が「経済的」なのか、確信が揺らいでいる声が聞こえてきます。
日本は水の豊かな国なので意識できませんが、水も有限です。化学肥料の使い過ぎによる水質汚染も問題になっています。