2025年12月号のメニュー
1 CICOUTEのA to Z 第22回『 V 「チクテのvendeuse」』 CICOUTE BAKERY 北村千里
2 12月のショーパン 第1回『Autumn』SHŌPAIN ARTISAN BAKEHOUSE 平山翔
3 パンの交換日記 第1回『パンの往復書簡を始めます。』 CROFT BAKERY 久保田英史
4 畑からはじまるパン作り 第1回『麦まき』C'EST UNE BONNE IDÉE! 有形泰輔第
5 今月の新麦コレクション!『麦フェス2025、無事終了しました!』
*記事内容は、2025年12月時点のものです。
1 CICOUTEのA to Z
AからZまで愛おしいパンたちを語る連載
CICOUTE BAKERY 北村千里
新麦コレクションの「新麦新聞」再開!!
まだ書き残していた「V」から「Z」。
残りのいくつかのお話を、掲載していただくことになりました。
池田さん、他皆々様に感謝申し上げます。
毎回長文、気持ち込めすぎて後日自分で読むのも恥ずかしい(笑)。
もう書き汚してしまうことはないだろうと思っておりましたが、もう少しだけお付き合いいただけますと幸いです。
*『CICOUTEのA to Z』は、2020年11月から連載スタート。「A」から「U」までは、サイト「小麦の教室」で全て読むことができます。会員限定です。サイトの右上の「新麦新聞」をクリックしていただき、パスワード(mugiko)を入れてください。
第22回 V 「チクテのvendeuse」

フランスから帰国した友人がよく口にしていた言葉、"vendeuse"。
販売員さんのことを「vendeuse」「vendur」というようです。
昨年今年と数年ぶりにフランスへ。
こっそりduolingoでフランス語の勉強をはじめました(笑。……役立てるまでにはまったく至っておりません)。
チクテは女性のみなので「vendeuse」。
他では珍しいかもしれませんが、チクテの販売スタッフはサンドイッチも作ります。
お野菜たちが届くとまずは仕分け作業と保存のための下処理、
具材の仕込みから組み立てまで、
もちろん梱包から販売までもすべてが販売スタッフみんなのお仕事。
そのおかげでパンの製造スタッフはパンに集中することができるのも、とても有難いことです。
丁寧な下処理や仕込みのおかげでいつも美しいサンドイッチが出来上がります。
そうお願いしたのには工程や作業的なことももちろんありましたが、
サンドイッチを楽しみにして来てくださるお客さまと対面してくれるのはもちろん、
「vendeuse」が自分たちの手で作り上げたものがたくさんの笑顔と繋がる、
作るしあわせをいっしょに感じてもらえたらという思いもありました。

ここ数ヶ月、チクテの大改革をひっそりと行っています。
原材料の高騰もあって、具材メインの商品を削り
食事のパンを以前よりもぐっと増やして、
シンプルな食事に寄り添うようなお食事パンをメインにしたラインナップへと
ゆっくりシフトしていっています。
食卓から日々を支えたい、そんな思いでいます。
それが、ずっと前からの夢でした。
ちょっとずつお客さまの反応を見ながら、
今求められることと、これから向かいたい方向を
思い描くだけでなく形にしていく密やかな大改革!
毎日試行錯誤する中でメニューも日々変わったり、有ったものが無くなったり、
そんな中で製造スタッフも大変ではありますが、
直接お客さまへ手渡しする販売の皆さんはもっと大変!
お客さまと対面してお伝えする販売のお仕事は、
もしかしたら作ることよりも難しい局面に直接向き合うことも多々、なのだと思います。
デンマークへの想いもあってロブロやたまに作るスモーブロなど、表には見えないけど水面下ではいろいろなやり取りをスタッフ間でも繰り返してきました。
たくさんの変更が続いて、毎日がいつもイレギュラー
販売スタッフの皆さんにも本当に申し訳ないなと思っていました。
そんな折に
「ちくさんが思うお店にしていっていいんですよ。」
「ちくさんの思うものを形にするのがわたしたちの仕事なので。だから大丈夫ですよ!」
ちょっとというか……とっても心に響きました。
心で嬉しい涙がポロリと
スモーブロを作るのに一工程ごとに確認に来てくれたり、
日々移り変わるメニューのおすすめの仕方や美味しい食べ方をメモして、
明日早速!とお客さまへお伝えしてくださったり
伝えきれない想いは「vendeuse」のみんなが引き受けてくれている。
パンは焼いて終わりではなくて、手渡して食べていただいてはじめてパンになる、と思う。
手渡し方ひとつで、美味しいパンは何倍にも美味しいパンになる
70%くらいのパンの日であっても、特別なパンになるかもしれない。
また来たいと思っていただけるか、
お店にたどり着く道や帰りの道も心にぽっと灯るような時間になるかは、
パンだけでは作り上げられないものなのかなと。
そんなずっと思っている「vendeuse」という存在について、
伝えてなくともそうして居てくれていることに
なんとも言えない感謝とリスペクトが溢れそうでした。
ある時は
ちょっとの楽しい話しでうふふとみんなで笑ったり、
それぞれのプライベートな話しでいっしょにうーんとなる。
お店のちょっとトラブルで意見をぶつからせたり、
美味しいを共有してじーんと皆で美味しい顔になったり、
ワハハとみんなで笑ったり。
そんなみんなのやさしさと程よい距離がとても心地よいです。
みんなで作り上げているのはお店全部。
お店の空気も「vendeuse」の皆が作ってくれてると言っても嘘じゃない。
あらためまして、
今年もみんなにありがとう!
2026年も、皆さまどうぞよろしくお願いいたします!
ひとりで小さくはじめたお店
今は大所帯だけど、ひとりひとりがとても大切な存在です。
本当にありがたいことだなと日々思うのです。
2 12月のショーパン
SHŌPAIN ARTISAN BAKEHOUSE 平山翔
栃木県那須塩原市にてショウパンアルティザンベイクハウスというお店を営んでおります、平山翔と申します。
自店を始めて約8年、会社勤めを経て、ベイカーになっておよそ20年。
もちろんパンに比重を置きつつ、それと同時にライフワークとして「見ること」と「撮ること」の写真を続けてきました。
このコーナーでは、食に関係することや、そうでないこともまとめて、私の撮った写真と、その写真を読み解く短いエッセイを書かせていただきます。多忙でお疲れの皆さまの息抜きのコーナーになればよいなと思います◎
第1回 「Autumn」

京都で独立した元スタッフ、店名にAutumnと名付けた彼女のために撮り下ろした1枚。
Los AngelesのPasadenaという少し山の方の地域。
大好きなアイスクリームショップに行く途中でふと足が止まった住宅。
一年後にこの地域を含めた様々な場所で深刻な山火事が起こりました。アイスクリームショップも休業。
ポートランドからのトランジットで偶然LAを訪れることになった私は、上空から凄惨な山火事を目撃しました。
気候変動による乾燥などが原因と言われています。
私たちのような小さなベーカリーができる気候変動対策や予防策は何だろうと深く考えさせられます。
どこにでもありそうな平和な日常風景ですが、私にとって忘れられない1枚となりました。
今という一瞬を真剣に大切に生きていきたいですね。
3 パンの交換日記
CROFT BAKERY 久保田英史

第1回 パンの往復書簡を始めます。
新麦新聞の再開にあたり、一枠に言葉を寄せることとなりました、
CROFT BAKERY(クロフトベーカリー)の久保田と申します。
群馬県前橋市の中心市街地から程近い住宅の並ぶ街角で小さなパン屋を営み、先日13年が過ぎました。
新聞と言えば、父親が新聞社勤めだったことからか、小さい頃は朝は全国紙と地方紙が届き、夜のテレビはニュースが占めていました。
彼の部屋に入ると、煙草の匂いがきつく、白黒のフィルムとカメラが机にポンポンと置かれ、床には原稿がくしゃっと丸められて転がっていました。
父のやることの見様見真似で、コクヨのA3のスクラップブックを分けてもらい、
面白いなと思う記事を切り貼りしていたんです。
高校2年のある日曜版に、パン屋を取り上げた記事がありました。
その当時、かつてフランスの植民地だったベトナムでは、都市部から電気やガスの平窯が次第に普及されるなかで、地方のパン屋は恥ずかしそうに薪窯を記者に見せる一方で、フランス、パリではポワラーヌという薪窯のパン屋に行列をなしているという比較文化的な話でした。
最新のパンのあり方をと追い求めると、時にそれは昔に戻ることだったりするパラドックスが起きるという興味深い仕事なんだよと、その時の僕に知らしめてくれたんです。酸性雨や、DDTやダイオキシンなどの化学物質の危険性などなど、環境問題が叫ばれていた時代にあって、環境への負荷を落とせる分野かなとも思えた。それがこの仕事に就こうと思ったきっかけでした。
30年以上経った今でもスクラップしたその記事をたまに読み返すことがあります。
そして今思うとスクラップしたその記事の上にあった日付の1993年は、フランスのパン屋さんにとって大事な転機となるパン法が制定された年だったんです。
だから時の記者もパン屋を取り上げたのだろうし、結果1人の読者がその仕事を目指そうと思うきっかけになった。
新聞に導かれた不肖な自分がいみじくも新聞と名の付くこちらに投稿するという。
何があるかわからないもんですね。
この新麦コレクションにおいて、同じ会員だけどどんなお店さんが名を連ねているのだろうの思うのは、僕だけでないのではないかと思いまして、この枠では、会員のお店さんと僕がパンの往復便をやり取りし、その様子を垣間見てもらおうと思い立ちました。
うまくお互いに条件が合うと、以前からパンの交換をしていて、そのあと大体電話で意見交換をしています。Instagramの僕のページでは、その一部を伝えていて、この新聞でもそう、繋がる方々がまだ知らぬお店を知るきっかけになれたらと願います。
また、他のパンのつくり手の考えを知ることはときに刺激であり、大げさかもしれませんがそれは、物理学者の理論屋が日々ロビーに集って同業と意見をぶつけあって自分のとなえる仮説を他の視点に晒すことで、より確かな理論を築いていくことに似ているなと思うんです。
これを読む方も一緒に学びを共有できたら嬉しいです。

クロフトベーカリーからは、こんなパンが届きますよ。
そんなこんなで、パンの交換をしてくださるお店さんを募集いたします。
よかったらお気軽に僕のInstagramのDMもしくは、
croftbakery@gmail.comまでお声かけくださいね。
お待ちしております。
4 「畑からはじまるパン作り」
C'EST UNE BONNE IDÉE! 有形泰輔

第1回 「麦まき」 ーセテュヌボンニデーのサワードウが出来るまでー
初めまして、川崎市多摩区と目黒区自由が丘にあるC’EST UNE BONNE IDÉE!(セテュヌボンニデ―)のシェフの有形と申します。
この度、新麦新聞の一部を担当させて頂き事になりました。
私がお伝えできることは何だろう?……と考えた時、
私たちのパンの美味しさを支えてくれている生産者の方々の事が一番に頭に浮かんできました。
生産者の方々のもとで、感じる味や香り、風景や空気、交わされる言葉なんかをお伝え出来たらと思っています。
それでは、セテュヌボンニデーのシグネチャーブレッドである「横浜小麦のサワードウ」についてのお話からスタートです。
自由が丘にある店舗から、車で20分ほど(7キロ圏内)のところに、その小麦「ユメシホウ」が育つ畑があります。
東急東横線の日吉駅が最寄り駅の小高い丘の上にある「藤田農園」さんです。
「藤田農園」さんは横浜特産のカリフラワーを中心に、お野菜と小麦を栽培しています。
3年前から、その「ユメシホウ」を島田製粉所(東京・世田谷区千歳船橋)さんで製粉し、使用しています。こちらの製粉所もお店から7キロ圏内にあります。
Local Millingの都市版、Urban Millingという取り組みになります。
クロフトベーカリーの久保田シェフから、海外のUrban Millingの話を聞き、興味をもち積極的に挑戦しています。
農園主の藤田わたるさんとは、歳も近く同世代。
仕事に真面目で誠実。物腰も柔らかく、尊敬できる生産者です。
彼と付き合っていくうちに、「畑を中心としたコミュニティを作ってみたい!」と思うようになりました。
そして今年6月には、地域のパン屋さんを誘って、収穫祭なるイベントを開催。
農家・製粉所・パン屋が畑を中心に集まり語らい、穏やかで楽しい平和な空気を感じることが出来ました。
「パン作りは、小麦粉から始まっているのではなく、畑(小麦)から始まっている」
そう確信を持てたのもこの会がきっかけです。
生産現場と私たちの仕事は、切っても切れない関係です。
工房から出て、畑に出る。
それは自身の仕事の解像度を上げてくれますし、そこで出会った農作物をどう自分が美味しく出来るのか、経験の引き出しを必死に探すのは力になります。
生産者さんとの会話の中にも、美味しく食べるヒントがたくさんあったりもします。
そして、パン職人の立場で畑に触れることは、とても気持ちのよい事です。お勧めです。。

そして、11月は来年の収穫に向けた種まきの季節です。
今回はこちらがメインです。
今年は地域のお店のシェフも数人参加して、機械撒き以外にも手撒きも体験。
11月秋晴れの中、ふかふかの土に触れ、踏みしめ、コロコロと手押しの麦まき機で ユメシホウ小麦を撒いていきます。
手撒きゾーンはロープで線を引き、溝を作り、麦を落とし、優しく土を被せていきます。
途中巨大なミミズにびっくりしながら、小麦が成長し穂を揺らす姿を想像しながら手を動かします。
仕事は真剣に、でも穏やかで心地よい時間。
みんなで撒き終えたら、少しお野菜の方のお手伝いと、小麦の作付けミーティング。
「次は麦踏みの時に!」
そんな別れの言葉を交わし、今年の麦まきを終えました。
半月後、藤田さんから無事発芽のお知らせが届きひと安心。(わざわざお知らせをくれる、優しい藤田さんの人柄に涙)
可愛い新芽たちが、これから越冬に入ります。
冬の厳しい北海道とは違いますが、無事に育ちますように。
美味しい麦になりますように。
藤田農園さんでの活動は、収穫祭までご紹介する予定です
お付き合いくださいませ。
今回はこんなところで終わりです。
また次回。
【コミュニティに参加してくれているパン屋さん】
・PROFUMO(横浜市津久井区)
・BAKE&ROLL(横浜市津久井区)
・LEN(川崎市津久井区)
・Cizia(品川区小山)
・SONGBARD BAKERY(大田区西蒲田)
*これらのパン屋さんでも、藤田さんのユメシホウ小麦のパンや、季節のお野菜が味わえます!
5 今月の新麦コレクション!
麦フェス2025、無事終了しました!
11/16(日)11:00〜18:00 SHIBUYA SAKURA STAGE

今年も、たくさんの方々が、参加してくださいました。

札幌のJapanese Ramen Noodle Lab Q平岡さんと佐賀の76pain堀川さんのコラボラーメンの会場、キッチン404。
麦フェスは、新麦コレクションの理念を体現する場所です。
新麦コレクションのロゴの5本線に象徴されている、生産者、製粉会社、流通業者、飲食店・加工業者、消費者が出会う。 別々に利益を追い求めていたときには気づけなかった可能性に気づき、気にかけたり、譲り合ったり、互いのために新しいことをはじめたり。 そのことが、小麦をおいしくしたり、食と農の持続可能性を高めるのではないかという志が新麦コレクションの原点です。
麦フェスが規模が大きくなるに従い、そこからずれつつあるのではないか? そんな批判に応える形で、2025は人と人が出会い、語り合う新麦コレクティブやワークショップを新たに作りました。
さて、当日、職人たちが心を込めて作ったおいしい小麦のフードから放たれる熱、 そこに集まったたくさんの方たちが作りだす熱。 相乗効果で会場はすごい熱を帯びていました。
寝ないでパンを作り上げ、遠い道のりを運んできて、笑顔でお客様と接していただくパン屋さん。
九州→札幌を通いあい、どこにもない、小麦への愛、ラーメン愛あふれる一杯を作り上げたJapanese Ramen Noodle Lab Q平岡さん、76pain堀川さん。
今回は麦に関わる人の声を届けることが大きなミッションでした。

PIZZERIA GITALIA DA FILIPPOの岩澤さん。

飯田商店の飯田さん

理事長池田が主宰した「小麦の教室」
「新麦ワークショップ」では、吟味を重ねた食材の作り手のすばらしさを熱く語ってくださったPIZZERIA GITALIA DA FILIPPOの岩澤さん。
惚れ込んだ梅山豚の生産者・塚原さん、茨城県産ゆめかおりの生産者宮田さんをよろこばせたいと何度も試作を重ね、とんでもなくおいしい肉まん、水餃子、混ぜそばを麦と豚だけで作り上げた飯田商店飯田さん。
理事長池田が主宰した「小麦の教室」では、5つの小麦と5人の職人が真剣に向き合い、365日杉窪シェフの神の舌による粉テイスティングと、成分分析の科学的データを付き合わせ、麦の個性に迫りました。

生産者、製粉会社という普段お客様に届きにくい人たちの言葉を届けるブース「新麦コレクティブ」。
また、生産者、製粉会社という普段お客様に届きにくい人たちの言葉を届けるブース「新麦コレクティブ」では、CROFT BAKERY久保田シェフ、C'EST UNE BONNE IDÉE! 有形シェフ、SHŌPAIN ARTISAN BAKEHOUSE平山シェフが、はじめての試みゆえにまったく手探りでしたが、素材の個性を届けるため試食のパンも作り、声をからせて生産者、製粉会社と麦のストーリーを語り合いました。
なにより感謝なのは、こうした話に熱心に耳を傾けてくださった皆さまの存在です。
小麦からおいしいものを作り上げる熱、食べたいと願い、食べて感動するお客様の熱、小麦や小麦粉を作る方の熱、もっともっと熱く燃え盛らせてらたくさんの方に伝え、日本中に広げていきたいのです。
ご出店いただいたみなさま、運営にあたっていただいた新麦コレクション会員各社のみなさま、いつも私たちをサポートしてくださる企業会員のみなさま、 本当に本当にありがとうございました!
この道は、持続可能な食と農の輝かしい未来へと通じていると信じて、これからも走り続けたいと思っています。
【麦フェス2025】
主催:NPO法人新麦コレクション
共催:一般社団法人渋谷あそびば制作委員会 協力:東急不動産株式会社
協賛:マルホン胡麻油(竹本油脂株式会社) 、株式会社生産者直売のれん会、HAPPY COOKING
